緋桜鬼譚


「疲れたのか」


 龍華の家を出てから、初めて話しかけてきた朱都に驚いて顔を向ける。――相変わらず、こちらを見てもくれないけれど。


「どうしてそう思ったの?」


「苦い顔してたからな」


 先程の考えが顔に出ていたのだろうか。それは定かではないが、朱都が一瞬でもこちらを向いてくれたのは確かだ。そのことに少し、安堵する。


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