緋桜鬼譚
「冷えてきたね」
「夜だからな」
「でも、さっきよりずっと寒く感じる」
「山の中だからな」
「山の中なの?」
言われてみれば、確かに地面を踏む感触はコンクリートよりも土のようだ。なんとなく、緩やかにだか傾斜している気もする。
「山の中には何があるの?」
「人ならざるモノが棲むのは空の上、海の底、そして山の中だろう? 古くから山は信仰の対象だ、龍華家が生贄を捧げてきたのだって山だしな」
「……神隠しみたいね」
「大差ないだろう、鬼だって神と崇められるんだから」