緋桜鬼譚


 微かに息を吐く音がする。素直に朱都についていく朔緋に、彼は呆れているのだ。目的地を気にしはしても、朱都についていくこと自体にはなんの疑問も抱かない。思考を放棄していると。


 それは朔緋にとっては至極当然の流れだったが――朱都には理解できないらしい。


 ――ずっとずっと、待っていたのだ。アヤトに逢えるその時を。たとえそれが望んだ邂逅とはかけ離れていたとしても――ずっとずっと、待っていたのだから。


 だから朱都が望ならどこへだって行くし、それは朔緋の望む道でもある。――朱都が自分のことを餌としか思っていない以上、それを伝える勇気なんてないけれど。


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