緋桜鬼譚
「逆に訊くけど、あなたについていく以外に、私にどうしろっていうの? 今更帰ることなんてできないし……だいたい、帰りたいって言ってらあなたは素直に帰してくれるの?」
「帰さないな。他の奴にみすみすお前を奪われるようなことはしない」
「……それ、言葉通りの意味なら嬉しいのにね」
今までの言動から、そんな風に受け止められるほど楽観的にはなれない。
「着いたぞ」
立ち止まる朱都に、朔緋もそれに倣う。突然の言葉に一瞬なんのことかと考えるが、おそらく目的地に着いたのだろうと解釈する。相変わらずの濃い霧に、どこに着いたのかなんて分からないけれど――