緋桜鬼譚


 門をくぐり、まず目を引いたのは庭に咲き乱れる彼岸花だ。鮮やかな緋色、細かな花弁――いかにもそれらしい雰囲気。


「怖いのか? まあいい意味の花でもないしな」


 彼岸花をじっと見つめる朔緋に朱都はからかいを含んだ声をあげるが、そうではない。確かに彼岸の頃に咲く花として不吉であるとされているが――


「私彼岸花って嫌いじゃないの。ううん、むしろ好き。だって綺麗じゃない? 確かに死人花とか捨て子花とか言われるけど、天上に咲く花とも言われるんだって」


「だからなんだよ」


「別に怖くないって話」


「お前さ、少しは怖いって感情がないのか? っていうか恐怖に限らずあんま感情がでてこないよな」


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