緋桜鬼譚


 お前が何を考えているのかさっぱり分からない、と溜息までつかれるが、それはこちらだって同じだ。朱都が何を考えているのかさっぱり分からない。


 庭を抜ければ今度こそ屋敷だ。落ち着いた佇まい、それはどことなく龍華の家に似ている気がする。玄関を上がり、そのまま座敷に通される。


「ちょっとここで待ってろ」


 逃げるなよ、と念を押して朱都は出ていく。逃げるなよと言われても――果たして自力で逃げられるのか、ここから。


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