緋桜鬼譚


 座敷自体は至って普通だ。少なくとも、見た目的には。だが短時間でこんなに上まで登ってきてしまったことを考えると、普通に見えるここだって一体何があるか。


 しばらく待てば、足音が聞こえてくる。音のする方向を見れば朱都と、もう一人、その後ろには少女がいる。


「今日からここで暮らすんだ。だがいきなり見知らぬ場所に来たんじゃ不便だろう、何かあったらこいつに訊け」


 少女はにこりと微笑んだ。


「夢前行方(ユメサキアユミ)と申します」


< 42 / 59 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop