緋桜鬼譚


 この世の者とは思えないほど美しい。行方に抱いた印象は、初めて朱都に出逢った時に感じたそれと同じだ。


 漆黒の髪に透いた灰色の瞳、黒い服に雪のように白い肌がよく映える。それは人間にしては美しすぎる、まるで生きた人形のようで――人形でないなら、おそらく彼女も、また。


「、あの」


「なんでしょう?」


「……行方さんも、鬼……なんですか」


「ええ。ここにいる者は皆そうですよ」


 行方の言葉に思わず朔緋は項垂れる。今までとは住む世界が違いすぎる――いや、これまでだって決して普通の暮らしとは程遠かっただろうが、次元が違う。


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