緋桜鬼譚
「朱都の姉の紗夕(サユ)です、よろしくどうぞ」
「あ、龍華朔緋です……よろしくお願いします」
「やっぱりね。……いい匂いがする」
「匂い……ですか?」
「うん、なんて言えばいいんだろうねえ……花のような、果物のような、蜂蜜のような――そんな甘ぁい香り」
すぅっと細められた真紅の瞳に、きゅっと吊り上がる紅い口角。その妖艶な表情に、雰囲気に、思わずのまれそうになる。
「――“美味しそう”」
するりと頬を撫でる白い指。その冷たさにぞくりとする。まるで、この空間の温度が下がってしまったかのように寒気がする――触れた指先から凍えていく。