緋桜鬼譚
「ああ、ごめんね無神経だった? 正直そんなこと忘れたかったよね」
「大丈夫、です。忘れたいのは確かですけど……」
「じゃあ、お詫びにいいこと教えてあげる。……簡単に忘れる方法、ないわけじゃないよ?」
聞きたい? と紗夕は小首を傾げる。本当にそんな方法があるのだろうか。もし、その話が本当なら――自分はどうするのだろう。
忘れたい。だが忘れることは怖い。しかしこのままでいるのは辛い――朱都は朔緋のことなど見てはくれないのだから。