蓮華畑の迷い女性
彼女の名前は「真理」、23歳のアルバイトで生活する可愛らしい娘だ。

私が仕事の合間に利用する喫茶店の片隅で、真理さんは正面に座っていた。

店のマスターがコーヒーを運び、カウンターの中に戻ると、真理さんは堰を切ったように話し始めた。



「私には付き合って2年になる同じバイト先の彼氏がいます。
半年前からは同棲も始めて、1日の大半は彼と同じ空間で過ごしています。
私は彼の事が大好きで、二人の間では結婚の話しも出てました。

でも最近、どうしても彼の事を信じることが出来ないんです。
特別大きな裏切りがあったとか、重大な隠し事をされたって訳じゃないんです。
ただ、何度か嘘を吐かれて・・・。
それが引っかかって、段々ギクシャクしてるって感じなんです。」


「どんな嘘か説明してくれないか?」


「はい。
最初の嘘は、高校の男友達と飲みに行くと言って女性と食事に行ってました。
その女性は彼と仲の良い先輩で、先輩の結婚祝いで飲んだだけだったんですけど。
あと、中学の同窓会だと言って、元カノのいる飲み会に参加していたんです。

最初の嘘が判った時、彼と話をしたんです。
嘘を吐かれるのは一番嫌だから絶対に嘘は吐かないでって。
彼も嘘は吐かないって約束してくれたんです。

でも、次の嘘が元カノ絡みだったので、私は大きなショックを受けました。

その後も小さな嘘がいくつかあって、その度に喧嘩しました。
嘘吐かれたら何が本当か判らなくなるから、何も信じられなくなるって言ったんですけど、
何度言っても彼は変わらないんです。」


「男らしくないなぁ・・・。
彼はどうして嘘を吐いたんだろうか?
真理さんはどう思う?」


「はい。
同じバイト先で色々と彼の様子を見ているせいか、私が段々ヤキモチ焼きになってました。
彼が女の子と遊びに行くとか言うと、すごく心配したり騒いだりしたと思います。
ずっとその事を言い続けて、彼に嫌な思いをさせてしまったのかもしれません。

でも、彼と付き合い始めたとき、元カノとカブッてた時期があって、
どうしても元カノの存在や他の女性の事が気になって仕方なかったんです。」



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