煌めきの瞬間
放課後
「遅かったね。お財布見つかった?」
「うん」
「早く食べなきゃ昼休み終わっちゃうよ。
あれ? そのパンどうしたの?」
教室に戻ったわたしは、体育館で安藤さんに会い、パンを貰った事を美鈴に話した。
美鈴は空になったお弁当箱の蓋を閉め、焼きそばパンに目を向けた。
「ふふっ。やっぱり楓さんは優しいな‥‥」
「え?」
美鈴の言葉に一瞬目が丸くなった。
初対面のわたしにパンをくれた安藤さんは、たしかに優しい人だと思う。
けど、「うざい」なんて言葉を口にする人を、美鈴は優しいの一言で表現するの?
「安藤さんは優しい人なの?」
「優しいよ。今からだとお弁当を食べる時間がないから、そのパンを春香にくれたんでしょ?」
「う‥‥うん。たぶん」
「でしょ? 楓さんは優しい人だよ」
とても優しい微笑みを見せた美鈴は、わたしには見えない何かを見ているようだった。