煌めきの瞬間
「痛かったら言って」
泣いてるわたしを苦しめているコンクリートの割れ目に、指を喰い込ませた安藤さん。
その安藤さんの表情は、無表情に近い呆れ顔だった。
うわぁ‥‥
安藤さんって、力強いんだ‥‥。
脆くなっているコンクリートの欠片がひとつ、音を立てて外れた。
安藤さんがもう一度指を喰い込ませ、出っ張っている欠片を引っ張り始める。
「あ、あの‥‥」
「何?」
「スカートが‥‥破れてるんです」
言った途端、
安藤さんの手がピタッと止まり、無表情だった顔が真っ赤に染まった。
「さっき無理に抜こうとして‥‥その時に‥‥」
安藤さんの顔は、わたしに負けないくらい真っ赤に染まって硬直していた。
凄く凄く恥ずかしいのに、安藤さんが動揺する姿にわたしは目を丸くした。
安藤さんも、こんなふうに表情が変わるんだ‥‥って。