煌めきの瞬間
振り返った安藤さんは、わたしの顔を見て足を止めた。
そして少しの間の後、制服のブレザーを脱ぎ、私の腰にシュッと巻いて袖を結んだ。
「見られても後悔するなよ」
無表情のまま言った安藤さんの言葉に、わたしはただ頷いた。
一人きりにならないならいい。
安藤さんが傍にいてくれるならいい。
そう思った。
粘り強くコンクリートの割れ目から破片を取っていく安藤さん。
「‥‥イッ‥」
「大丈夫ですか!?」
コンクリートの割れ目に喰い込ませてた安藤さんの指が赤く腫れてる。
どうしよう、わたしのせいだ‥‥。
やっぱり先生を呼んで来てもらった方が良いんだよね。
これ以上安藤さんに迷惑かけられない。
「あの、やっぱり――」
「人の心配をする前に自分の心配をしなさい」
視線を合わせないままわたしの言葉を遮った安藤さんは、無表情のままコンクリートの欠片を取り続ける。