煌めきの瞬間
「よし。これで抜けれるんじゃないか?」
胸の感覚を覚える前に、安藤さんが口を開いてスッと立ちあがった。
わたしはゆっくりと体を前に出し、両手を地面に付けた。
あっ‥‥潜れた~!
「やったぁ!」
ぺたりと地面に座り込んだわたしは、身軽になった腰に手を当て叫んだ。
そして、ブレザーを少し捲ってスカートを確認する。
「安藤さん! 本当にありがとうございました!!」
「怪我はしてない?」
「はい! スカートが少し破れてフォックが壊れちゃってますけど大丈夫です」
立ちあがって深々と頭を下げたわたしに、安藤さんは「早く行くぞ」と言った。
「あのっ、このブレザー‥‥」
「スカート直すまで使ってていいよ」
歩きながら振り返らずに言った安藤さん。
わたしは、チャイムの音が校舎から響く中、小さくなっていく安藤さんの後ろ姿を見ていた。