いつかまた、同じ空が見れると信じて
「杏・・・」子と言う前にタクヤの声が響いた。

「お姉ちゃん!」

僕はびっくりして思わずタクヤを見た。

「知り合い?」

タクヤは彼女の元に駆け寄ると、クルッと僕を向き直ってニコッと笑った。

「私の彼氏。」

杏子がふて腐れたようにボソッと言ってタクヤの手を握った。僕は大きな溜息をついて彼女を見た。

「お前さぁ、もっと言うことないの?」

「・・・」

「なんで急に朝来なくなったわけ?」

杏子はゆっくり顔を上げて僕を見た。

「もしかして・・・待ってたの?」

「当たり前だろ?たまたま遊びに来たように見えるか
よ。そりゃぁ別に待ち合わせしてたわけじゃないかもしれないけど、ちょっとくらい何か・・・あぁ~もういいや。話は後だ。なんか喰おう。お腹すいちゃったよ。」

「・・・うん。」

彼女は小さく頷いた。

「美味いもんおごりますよ?お嬢さん。」

「牛丼だけど、拓也君も来る?」

「おい、大丈夫かよ?」

僕は彼女の提案に戸惑った。

「いいでしょ、一人分くらい増えたって。」

「いや、それは良いんだけど、タクヤの親だって心配
するだろ?」

「大丈夫だよ。」

「大丈夫って・・・。」

言い終わる前に、二人はもう鼻歌を歌いながら歩き出している。

「おい、待てよ。お金出すの俺だよ?」

「キャー。」

待つどころか、二人はキャーキャー言いながら駆け出した。

「・・・ったく。」

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