いつかまた、同じ空が見れると信じて
長時間のドロケーでクタクタの足をなんとか説得して二人の腕を掴む。

「あ~もうっ。」

二人はケラケラ笑っている。空はもう赤から黒へ変わり始めていた。

「こんな時間にこの道歩くの、久しぶりだなぁ。」

「そうなの?」

「朝は毎日通ってるけど、夕方公園から家に向かうことなんて滅多にないから。」

「お兄ちゃん家ってどこにあるの?」

左手に杏子、右手に僕の手を握ったタクヤは、両腕をブンブン前後に振りながら僕を見上げた。

「そこの角曲がってすぐだよ。」

「僕、お兄ちゃん家行きたいなぁ。」

「汚いからだめ。」

足の踏み場もないほど散らかっている。

「え~。」

二人の声が見事にハモった。

「おい、杏子まで。」

「行ってみたいよね?」

杏子が悪戯っぽい目をタクヤに向けている。

「ねー。」

「お前らなぁ。・・・よぉし、杏子がご飯作ってくれ
るならいいよ。」

「えっ?」

杏子は不意を付かれた顔をしている。

「お姉ちゃん、作ってー。」

ほらみろ、これで形勢大逆転だ。

「むりむりむりむりむりっ。」

「お姉ちゃん、お願い。」

「う~。」

困った顔でタクヤを見つめる杏子を横目に

「じゃぁ牛丼屋じゃなくてスーパーだな。」

「だなっ。」

と男同士でどんどん話は進んで行く。

「まいったなぁ。」

僕は知らん振りでタクヤに尋ねる。

「何食べたい?」

「僕、生姜焼き!」

「おっ渋いね。杏子ちゃん、生姜焼き3人前ねっ。」

てっきりカレー程度かと思っていた。いきなり生姜焼
きとは難易度が高い。さっきからずっと僕を睨んでいる杏子の視線に対抗しようと思った時、

「三人で競争しようっ。ヨーイドンッ」

そう言って走り出したタクヤを慌てて追いかけるように僕と杏子も走り出した。

僕が一着、タクヤが二着、少し遅れて杏子が駆け込んできた。彼女は苦しそうにゼーゼーと息をしている。

「もうだめだぁ。拓也くんに負けちゃったなぁ。」

「お姉ちゃん遅いっ。」

「遅いっ。」

僕も便乗してみたが、タクヤにみせる可愛い笑顔と、僕に向けるその顔のギャップは何だろう。どこで切り替えてるんだか。
< 16 / 40 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop