いつかまた、同じ空が見れると信じて
本心だった。みんながどれだけ僕を心配してるかだって、もう二度と会えないことだって、どれだけ悲しむかだって分かってる。だけど僕の答えに迷いなんかなかった。けれど、彼女は僕の胸から顔を離し、真っ赤な目をして僕を見た。

「私、このまま修一を一緒にいさせたら、いつか絶対後悔する。修一には夢があるでしょ?綺麗なお嫁さん
もらって、子供作って・・・。」

「お前がいなきゃ、そんなん何の意味も無いんだよ。お前がいない世界なんて、生きる意味なんて無い!そんな世界に未練なんて無いよ!」

僕はおもちゃを強請る子供のように必死に彼女に訴えた。だけど彼女は決して首を立てには振らず、その代わりに僕の目をしっかりと見てこう言った。

「修一はこんな所にいたら駄目だよ。幻なんだよ?存在しないんだよ?私、修一のこと大好きだから、生きて欲しい。生きて、修一。私の分もたくさんたくさん。」

僕は彼女の両腕を掴んで泣き崩れていた。彼女の気持ちが、そしてその気持ちが揺るがないことが、痛いくらい伝わってきた。もし僕が逆の立場なら、たぶん杏子と同じことを言うと思う。きっと、もうどうにも出来ない現実を受け入れることは、そんな簡単じゃなかった。

 その夜、涙が枯れるまで泣いた僕達は、部屋にあったカップラーメンを食べ、一緒にベッドに入った。虫の音も止み、外はもうとっくに冬の準備を整えていた。僕のパーカーを着た彼女は、泣き疲れたのかもうスヤスヤと寝入っている。そんな彼女の頬をゆっくり撫でながら考えていた。僕は・・・僕が一番失いたくないのは間違いなく杏子だ。それが現実の世界ではなくても、そんなのは構わない。だけど、きっとそうはいかない。どんな結果になっても、結局杏子は辛い思いをするだろう。僕は自分の無力さを実感させられた。僕に出来ることはもう何もないのだろうか。

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