きらい。だから好き。
石田の真っ黒な深い瞳と視線が合う。


一瞬、こちらの思惑を見透かされている気がした。


心音がおさまらない。


ざわざわ嫌な感じがして、
緊張した感じがして、
少し切ない感じもして──



「やっぱりね」


石田は冷艶に微笑んで、ステージに引き返そうとする。


はっ!?
それだけかい!!


「ちょっ──ちょちょちょちょっと待ったぁー!! 何でそんなこと分かるわけ!?」


石田は立ち止まり、またこっちに戻ってきた……
──かと思った次の瞬間。


触れそうになるくらいの距離まで近づいて、顔を覗き込んでくる。

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