きらい。だから好き。
「ただいまー」
「お帰り!」
リビングから母の声が追ってくる。
「カナエ、ご飯できてるわよー?」
「いらなーい!」
叫び返して階段を上っていく。
部屋に着くなり、ドアも閉めずにベッドにダイブした。
何も考えていない時に限って、思い出したくないことばかりが頭に浮かぶ。
『──好きなんだよ──お前が──!!』
あんなに真面目に告白してくれたのに、私はなんてヒドイことを言ってしまったんだろう……。
「──やだっ! ハルのことはもう思い出したくない!」
独りで唸って、クッションを部屋の外に放り投げた。
『ハルのこと好きなの?』
突然、今度は石田の言葉がよみがえる。
──そう言われてみれば……
「何でハルが好きなんだろ…?」