きらい。だから好き。
その瞬間。
2人だけを、時を止めたような静寂が包んだ。


周りから切り取られた時間の狭間で、私たちはただ、見つめ合う。

ものも言わずに、毅然に。




──その時間が動き出したのは、ミキが微笑んだのと同時だった。

騒音にも負けない、明るい声でミキが言った。


「そんなこと、もう知ってる。……早くしないと、バンド始まっちゃうよ? ハルくんたちのところに行ってあげて」


「うん。……ありがと」




急いで体育館に向かった私は、友達と仕事をバトンタッチして、舞台裏に立つ。


そこではハルたちが打ち合せをしていた。

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