Bad Girl~不良少女~
思い返して見ると、あの日学校に行かなければ、
あの日焼きそばパンを買いに行かなければ、
栗崎に注意を受けることもなかった。
栗崎と出会うこともなかった。
そう考えれば、あの日がすべての始まりで。
「すべての始まりの日、でしょ?」
同じことを考えていたことも嬉しかったけど、栗崎の顔が本当に楽しそうでドキっとしてしまった。
「確かに……」
うちにとって、思い出に残る日ってあるんだろうか。
こうして栗崎と一緒にいられる時間が、いつの間にか楽しくて、それでいて当たり前になっている。
だから、全部が思い出に残る日なのかもしれない。
「俺は、稜ちゃんに出会えてよかったと心のそこから思ってる。
俺と稜ちゃんが出会ったのは、必然だけどね」
いつものお得意顔をして、栗崎はにっこり微笑んだ。
「バカか」
恥ずかしさを隠すための、キツいせりふだっていうことも、きっと栗崎は気づいてる。
「うち、こっちだから」
「送ってくよ?」
「いいっ。香矢に見つかったらヤバいから」
あいつうるさいんだもん。
それに、今まで栗崎とはなんでもないって言い張ってきた分、今更好きになったなんて言えないし。
「そっか……。じゃ、また明日ね」
本当に悲しそうな顔をした後、栗崎は寂しげに微笑んで言った。