Bad Girl~不良少女~
とりあえず中に入れ、と香矢に言われポカンとしたままおばあの部屋に入った。
畳の上の胡坐をかいて座ると、おばあがなにやら紙を広げた。
「一応稜には報告しておうと思ってさ」
いつになく楽しそうに広げた紙のしわを伸ばしながら香矢が言った。
「おう…」
まったく話が見えないうちは、とりあえず紙を覗き込むことにする。
「これ…町内の地図か?」
「そう。ここが、うち。ここが、栗崎の家」
香矢が色ペンで印をつけていく。
「ここが、長田組と横田組の事務所な」
こうしてみてみると、栗崎の家と下の組の事務所はそんなに離れてない。
「ここ、栗崎の親父の政治事務所」
このあたりで一等地と言われる場所にある事務所は、栗崎の親父を知らなくても、立派な建物で有名。
「で、これがなにになるんだよ?」
ただ印をつけているだけで、まったく何をしたいのかわからない。
「まずは、この距離感が大事なんだよ」
香矢は真剣な顔で話しながらも、やっぱりどこか声は楽しそう。
「どこを責めていくのが、栗崎にとって一番痛いのかを考えるんだ」