Bad Girl~不良少女~
こういうときのおばあは有無を言わさない雰囲気を纏っていて、その頼もしさったらないんだから。
「それじゃ、早速説明しますよ。…ほら、稜落ち着いて」
ひっきりなしに体を動かしていたうちをけん制するように、静かに咎める。
「悪ぃ、落ち着かなくてよ…」
照れ隠しに頭を掻いて、今度はちゃんと姿勢を正す。
「まずこのメンバーの中でも、2手に別れてもらいます。佐野のチームでさらに2つに別けて、その中の1つと稜、もう1つと輝之よ。
片方は正面から、もう片方は裏口から入ることになってます。どちらがいいですか」
うちと親父を交互に見て問いかける。
「俺はどっちでも。稜はどっちが行きやすい?」
急に父親の顔をして、優しい眼差しを向ける奴が、なんだかちょっと気持ち悪い。
栗崎の部屋に近いのは、いったいどっちなんだろう。
「裏口って、どこにあんだ?」
「正面から見て、裏手の左側よ」
ってことは、正面の方が近いわけだ。
「……裏口」
できるだけ栗崎と顔を合わせるのを遅らせたかった。