Bad Girl~不良少女~
ピッとボタンを押して、恐る恐るケータイを耳に当てる。
「も…もしもし……」
「稜ちゃん……」
いつもより覇気がないのは、相手が栗崎だからだ。
「ど、どうかしたのかよ…」
緊張して、しどろもどろになるうちとは対照的に、落ち着いて冷静な雰囲気を出しながら、栗崎は黙った。
「明日、会えないかな」
奴の声は、悔しくも心地よくうちの耳を侵す。
「あ、明日?……おう、全然いいけど」
ほんと、文面だけ見たらうちのが男だよな。
可愛くなんてなれない自分に苦笑しながら、若干焦り気味で答えを返した。
「じゃあ明日、あの河原で」
栗崎の指した河原がどこのことなのか、考える必要もなかった。
″俺は、稜ちゃんのいるところは不思議と分かっちゃうからさ。運命の赤い糸ってやつ″
うちが栗崎を好きだって自覚したあの日、栗崎にキスされた河原のことだ。
思えば、たった1週間しか経ってないんだ……。
「おう」
短く返事を返せば、ぷつっと音がして電話は切れた。