Bad Girl~不良少女~
後ろでクスッと笑われた気がして、チラッと振り返れば、目の前まで迫った栗崎の顔があった。
「わっ」
驚いて離れようとすれば、腕を掴まれて引き寄せられる。
「ちょ、くりさっ__」
言い終わる前に、チュッと唇が重なった。
そのまま抱きすくめられてしまえば、もう抵抗する気力なんかなかった。
「そのまま聞いて。
稜ちゃんがうちに来てくれた日。稜ちゃんが帰ってすぐ、美麗がうちを訪ねて来たんだ」
やっぱり、あの時すれ違ったのは、吉岡美麗だったんだ。
「そのとき、美麗は、改めて俺と結婚する気はないって言いに来た。
美麗にも、俺と同じで稜ちゃんみたいに大切な人がいるんだ、って。どうしてもその人と結婚したいから、どうにかしようって。
だから、俺ら決めたよ。お互いの親に、結婚する気はないって言おうと思うんだ。
もし、反対されたり受け入れてもらえなかったら家を出る覚悟があるとまで言うつもりでいる」
真剣そのものと言った声で栗崎の口から発せられた言葉は、うちを固まらせるに十分だった。
「え…」
「昨日、稜ちゃんたちが帰ったあと、親父に言ったよ。すごい剣幕で怒鳴られたけど、俺は本気だって示してきた。
美麗も、昨日か今日あたり言ってるはずだから、もうちょっと待って。なにも心配しないで、一緒に居られる日は、もう少しだから」
頭の中で、香矢がほらみろと笑った気がした。