時雨の夜に
忘れたい記憶
ひどい雨だった。
その交差点の風景に、ぽつんと取り残された私がいる。
傘も、持たずに。
最近、一段と雨風が冷たくなった。
秋という季節も、そろそろ過去のものになろうとしている。
だけど私は。
私はまだ、過去にすがりついていた。
先刻サヨナラをした彼との日々を、忘れられずに……。
だからこうして、ただ、冷たい雨に打たれていることしかできない。
< 1 / 42 >