時雨の夜に
忘れたい記憶





ひどい雨だった。


その交差点の風景に、ぽつんと取り残された私がいる。

傘も、持たずに。






最近、一段と雨風が冷たくなった。
秋という季節も、そろそろ過去のものになろうとしている。


だけど私は。



私はまだ、過去にすがりついていた。
先刻サヨナラをした彼との日々を、忘れられずに……。


だからこうして、ただ、冷たい雨に打たれていることしかできない。


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