時雨の夜に
雨男
気付いたら6時半で、腕時計が壊れたんじゃないかと疑いながら、デパートを出ようとした。
ちょうどその時である。
まるで1分1秒計算したかのように、時雨(しぐれ)にも似た雨が、急に窓を打ち始めたのだ。
「ウソ、冗談でしょ!?」
どうして傘持ってない日に限って雨が降るのよ、と。
ぼやいた背後に声が響く。
「ごめん。たぶんそれ、俺のせいだ」
振り返って見たら、あの男性がいた。