時雨の夜に
2回目に会った日も、やっぱり私は傘を準備した。
メイクも水に負けないもので統一してきたし、髪型が崩れないように、ストレートのままにしておいた。
そして、前回同様、曇り空からポツリポツリと雫が垂れる。
──彼が来る──
その前触れ。
「ごめん、また遅刻した!」
目を細めて苦笑する彼の表情が、私はすごく好きになっていた。
嫌気なんて微塵も感じなかったから、笑顔を返した。
私は知っていた。
デートの度に彼が遅刻してくるのは、私が待ち合わせ場所まで、雨の中を歩かなくても済むように気をつかってくれているんだと。
そうして、私とシグレは4回デートした。
2回目のデートは水族館。
幻想的な青の世界の中で、そっと手を繋いできたのはシグレの方だった。