赤ずきんちゃんと狼くん
「おばあさんのところへ行くの?」
彼は微笑みながら尋ねてきたけれど、私は怖くなった。彼におばあちゃんのことを話したことはない。寧ろ、初めて会ったのにどうして彼がそんなことを知っているのだろうか。そして、彼の目は全く笑っていない。何も映していないような、何の感情も読み取れない瞳。
「何故おばあちゃんのことを知っているの?」
とても深く冷たい瞳をした彼は、何を考えているのかわからない。
「それはね」
彼はわたしの顎をぐっと上にあげて、冷酷な笑みを浮かべた。
「僕と君が、結婚するからだよ。僕はね、君が生まれたときから君のことを知っている。‥全部ね」
そういって彼は、ふふっ と笑った。