赤ずきんちゃんと狼くん



ゾッとした。
ここにいてはいけない‥。
そう思わせるには十分なほどに、彼の冷酷な笑みは怖かった。相変わらず彼の瞳は感情を読み取ることができない。



「あなたと契りを交わすつもりはありません」



早く森からでなければ‥!
そう思い、立ち上がる。
そして歩き出そうとしたとき、いつの間にか立ち上がった彼に勢いよく腕を引かれ、体制を崩したわたしは彼の胸に受け止められた。



「‥離してください」



ぐいっと彼の胸を押してみるが、しっかりと押さえ付けられていてびくともしない。

すると、彼はわたしの耳元に唇を寄せて囁いた。



「やっと捕まえた。‥逃がさないよ?絶対に、ね」



逃げるわよ!と言い返そうと思うのに、だんだん意識が遠くなっていく。



完全に意識を失う前に、わたしは彼の低い声を聞いた。






「‥おやすみ。僕のかわいいお姫さま」





END.
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