不思議病-フシギビョウ-は死に至る


「感想文なんて、小学生かっつーの」

「……そんなに文章書くのが嫌なんですか?」

リンが言った。とげがある言い方だ。

……わざわざ隠すこともない。

「……苦手だ」

そもそも学校の宿題が苦手だ。

オレは夏休み、作文の宿題をいつも最後のほうにやる男だ。

そんなオレが進んで作文などできるはずがない。

「そんなときはパソコンでぱぱっとやってしまえばいいんだよ」

藤沢は手で空中のキーボードをたたくまねをする。

藤沢はパソコン部で、パソコンが大の得意だ。

画面を見ない、タッチタイピングができる。

それを得意げに見せられたとき、かなりむかついた。

「誰もがお前みたいな人間だと思うなよ!キーボード見たり画面見たりで首が疲れるだろ!!」

「慣れの問題だよ!」

「慣れるかあっ!!オレはお前みたいに強くなれないんだあっ!!」

キーボードを見ずに正確にたたける人間。

そいつらがオレには機械にしか見えない。

「慣れるといいんだけどなあ……」

藤沢はいまだに空中のキーボードをたたき続けている。

リンは、オレに少しあきれているように、ため息を吐いた。

「……学校の宿題だと思わなければいいんですよ」

それは名案だ。


< 109 / 248 >

この作品をシェア

pagetop