不思議病-フシギビョウ-は死に至る
食後、オレたちは埠頭に向かった。
カッターは大型のボート。
座席が六列、横に四人座れるようだ。
このサイズの舟なら転覆する心配もないだろう。
座席の隙間に、オレの身長を越す長さのオールが横たわっていた。
「Nice boat.」
オレはなんとなく、そうつぶやいた。
「これからカッター訓練です。私はインストラクターとしてみなさんに同行します」
よろしくお願いします、と若い女性が頭を下げた。
「みなさん、ライフジャケットをきちんと身に着けましたか?」
聞かなくても、みんな上がオレンジ一色だろ。
「みなさん、海に出たらきちんと指示どうりに動いてくださいね」
それが安全に航行するために必要な事ですから、と。
基本だが、海は危ないからなあ。
説明も終わり、舟に乗り込む半クラスメイト。
オールは二人一組でこぐらしい。
「藤沢はオレの隣な」
と、オレは舟の内側の席に座る。
藤沢は外側だ。
「絶対突き落とさないでね」
「そのときになったらな」
「ちょ、ちょっと!?返すセリフ間違ってない!?」
まあ、大丈夫だ。
危険な場所で危険行動を起こすほどバカじゃない。
「よろしくね」
「あ、はい、よろしくお願いします」
後ろから聞こえてきた声の一つはリンのものだった。
どうやらリンはオレの真後ろらしい。
組んでいるのは……クラスでおとなしめの女子。
リンの性格からしてパートナー選びは苦労しただろうなあ。
なんてことを考えていたら、出航する準備が整ったようだった。