不思議病-フシギビョウ-は死に至る


職員室に入ったところで気が付いた。

そういえばくるりんの本名を聞いていない。

それにくるりんの顔を知らない。

困った。
これでは誰かに尋ねることもできやしない。

なんて言えばいい?

なんて言えばそのくるりんまでたどり着ける?



オレたちはうろたえた。
……が、リンはそうでもなかった。



「文芸部顧問の先生はいらっしゃいますか?」



おお、その手があった。



「ああ、はい、わたくしですね」

奥のメガネのおっさんが立ち上がった。

どうやらあの人がくるりんらしい。





「はい……印はこれでよろしいですね」

ぽんぽんぽん、と手際よくハンコが押された入部届四枚。

「これで文芸部も存続決定。いやあ、よかったです」

もしかすると文芸部存続をかけた壮絶なドラマがあったかもしれないが、興味ないので放っておこう。

「では、これはわたくしのほうで出しておきます。これからよろしくお願いしますね」

「お願いしますー」



くるりんは見た目も人のよさそうな、いい人だった。



本名は聞き忘れたが。


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