不思議病-フシギビョウ-は死に至る
「オレも同じバスなんで、帰ります」
その言葉はオレの口からさらりと出た。
「お疲れ」
「お疲れさま」
「乙カレー」
「俺も帰りたい」
「あんたはダメ」
みんな、思い思いの軽いねぎらいの言葉をかけてくれた。
「お疲れ様です」
「お疲れさん」
オレたちも、答えた。
中学校のとき部活をサボりまくっていたオレがまったく知らなかった感覚。
特に何か仕事をしたってわけでもない。
ただ、相手にそんな言葉をかけてもらうことに、ちょっとくすぐったさを感じてしまった。
まあそんなこんなで、オレとリンは同じバスに乗っているわけだ。
オレが文芸部に通うのも長くてあと三日。
カウントダウンが出来る。
……それほど気分が乗らないが。
それもこれも。
「リン……帰りのバスくらい本読むのやめないか」
「……何でですか?」
まあそう聞くのもわからない話でもないが。
昨日より時間が早いためか、現在バスの乗客はオレたち二人しかいない。
その状況でリンに沈黙されたら……オレは黙っているしかない。
まだまだ元気が有り余るこの時間帯に黙って家に帰るってのは、すごくツマラナイ。
オレの中でツマラナイってことはメンドクサイってことに近い。
そして、オレはメンドクサイが嫌いだ。