不思議病-フシギビョウ-は死に至る


本は閉じていないが、視線は完全にこちらに向いている。

どうやら少しでも興味を持ってもらえたらしい。

それは純粋に嬉しいことだ。

「えー、ではさっきのネタばらし」

リンは本をたくさん読んでいそうで、いろいろ知識もありそうだがこんな小ネタではオレのほうが物知りかもしれない。

気分も乗ってきた。

「それは――DHMOの化学式書いてみればわかる」

「化学式ってことは……その物質を構成する元素の式、ですよね」

あまり勉強が好きではないオレではよくわからないが、大体あっているだろう。

「そうだ。最初にも言ったがDHMOは日本語で一酸化二水素だ」

一酸化二水素。
酸素Oが一つに水素Hが二つ。

賢そうなリンならすぐにわかるはず。



「H2O――水、ですね」

「その通り。そして今までさも環境汚染しまくり物質のように語ってきたが、嘘は言ってないぜ」

「……そうですね」

「他にも……農薬散布に使われていたり、金属を腐らせたり……と。いやあ、言葉ってすごい」

「……そうですね」

同じ言葉。

だけど、リンは少し笑ってくれた。
今朝と同じ、爽やかな笑顔。



それに、見とれてしまうオレがいる。


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