不思議病-フシギビョウ-は死に至る
こんなことに何かしらの感動を覚えるオレは馬鹿なんじゃないだろうか?
そんな気がする。
そんな気がするほど、何のひねりもない感情。
オレが好きなネタはウィットに富んでいて、シニカルな表現だったり、シュールな切り返しだったりする。
だから、それと比べると何の面白みもないんだ。
オレらしくない。
ただ素直に、
「私の顔に、何かついてますか?」
――リンの笑顔を、もっと見ていたいと思ったんだ。
「いや、別に」
気がつけば、車内の電光掲示板が次の停留所を示している。
「じゃ、オレはここで」
「そうですね」
リンもオレが乗ってくる停留所を憶えているらしかった。
そりゃあ、そうかもしれない。
毎朝前に座る奴がどのくらいで乗り込んでくるかくらい、簡単に憶えてしまうだろう。
オレは後ろを気にしてないのでそんな風に思われていることに気付かなかったが。
そうだ。
「リンはどこらへんで降りるんだ?」
「……それを聞いてどうするんです?」
いや、正直そんな返し方されるとは思わなかった。
今の冷ややかな笑みが、さっきの爽やかな笑みとの対比で一層怖い。
「まあ、どうってわけじゃないけどさ」
「海です」
へ?
「停留所の名前言ってもわからないでしょう?」
確かにそうだ。