不思議病-フシギビョウ-は死に至る
「ワタシも北中だ。奇遇だね」
「部長。戻ってきてたのか」
まったく気付かなかった。
「お前はどこなんだ?」
エイヤの口から出た言葉だった。
エイヤが自分から話しかけてくれるのは初めてだ。
なんだか嬉しい気分になる。
「光中」
海のほうに住んでいる人間は光中に行くもんだ。
「光、か」
エイヤはそんなことをつぶやいた。
なにか思うところでもあったのだろうか?
まあいい。舌の根の乾かぬうちに次の話題だ。
「いやあ。うちの学校はかなり悪かったよ」
まあオレ自身はそんなこともないと思っているが、海の方の学校――光中という前評判があるのでこう話したほうが盛り上がる。
だから、オレはそうやって中学校の悪い話に持っていこうとしたのだが、
「悪い。その話はなしにしてくれ」
エイヤが拒絶した。
「そ、そうか……」
オレもそう返すしかなかった。
そこには触れてはいけない何かがあるような気がした。
地雷を踏むほどオレもバカじゃない。
「ではこれからの話をしよう」
少し空気が悪くなったところ、キョウスケがこう切り出した。
キョウスケの――まるで空気が読めないかのような――活力のある言葉は、こんなときに役に立つ。