不思議病-フシギビョウ-は死に至る
新入部員歓迎会の詳細も決まったところで、バスの時間が来た。
「お疲れ様です」
そう言って部室を出るオレとリン。
人の少なくなった廊下に、足音が二つ、一定の間隔で響く。
……空気が重いとです。
あれはやっぱりしくじってたのか。
うーん。
オレは思案しながら、歩く。
――リンは何を考えながら歩いているんだろうな。
オレはたまにそんなことも考えていた。
結局バスに乗り込むまで無言だった。
リンはいつもの本を読んでいる。
オレのメンドクサイという気持ちは、この空気を破ることに感じていた。
ただバスに揺られているだけの帰宅。
――部活に入るまではそうだった。
この学校に通っている人間で、この方向に住んでいる奴はそれほど多くない。
藤沢も降りるのが早く、バスで一人の時間は長かった。
これからは部活もあるし一緒に帰れることなんて少なくなるだろう。
だから、オレはリンがいてくれてありがたいと思っているところがある。
たとえ、
「明日」
どんなに、
「明日で六人全員来る必要がなくなるんだよな」
空気が重かろうと、
「実はオレ」
会話が続かなかろうと、
「それで幽霊部員になろうかなー、とか思ってたんだけど」
この、
「ちゃんと、部活行こうかなって、思ってさ」
――この寂しさが、少し紛れる。
「やっと」
リンが、
「やっとその気になってくれましたか」
少し爽やかに、笑ってくれた。
「へ?今なんて」
「ほら、バス出ますよ。早く降りてください」
ホントだ。
でもそれよりさっきの言葉が気になる。
「ほら」
「ああ。じゃあな」
バスを見送ったあとに思う。
――そういえば。
オレがバスを降りたあと、リンはずっと一人なんだよな……。