不思議病-フシギビョウ-は死に至る
「ナオキさん、駅前ですよ」
「ああ」
オレたちはバスを降りる。
駅。
オレはインドアだから、電車なんてほとんど使わない。
だから、駅に来ることはほとんどなかった。
あったと言っても、小学校の遠足くらい。
ケータイの時計を見ると、十一時ちょうど。
駅前のベンチには、文芸部六人全員が集まった。
もうなじみのメンバー。
違うのは、制服と私服、部室と駅前、というところだけだろうか。
この違和感は、オレにとって初めてのものだ。
今朝も感じたが、今はより一層感じる。
「……今北産業」
……。
いつもどおり、無視された……。
「おはよう諸君!もう昼だからこんにちはかもしれんが」
キョウスケを皮切りに、各々が軽い挨拶をしていく。
「今日は文芸部新入部員歓迎会だ。そこのイタリア料理チェーン店で安っぽい昼食を取ってから二次会のカラオケに向かう。カラオケは自由参加だが、いまさら帰りたいなんて言わないように」
オレたちの自由は、どこにある。
キョウスケが『そこの』と言ったチェーン店はここからでも見える場所にあった。
何度か食べに行ったことがあるが、確かに安い。
「では行こう」
キョウスケがそう言って、オレたち六人は歩き出した。