月は太陽に恋をした
ブーッ、ブーッ…
ぼんやりしていた俺はケータイがしつこく鳴っている事に気づいて、ケータイを見ると知らない番号だった。
『誰だ…?』
ゆっくり通話ボタンに指を当てると、ためらいがちに声が聞こえてきた。
「も、もしもし…!」
『…誰?』
「あ、えっと、森下千夏ですっ!」
『…森下、?』
急になんだと言う気持ちと、誰に番号を聞いたんだ?という疑問に黙ると、森下は小さな声で続けた。
「急にごめんね!、番号は先生に名簿のやつを教えてもらったの!…昨日雨の中帰っちゃったから、風邪引いちゃったから今日休んだのかな…と思って」
『いや、大丈夫だ』
「そうなの?」
少し安心したように言う森下に俺は続けた。
『俺よりお前は?』
「へ?」
『いや…大丈夫、なのか?』
聞いて良いのかが分からなくて小さな声で言うと、森下は小さく笑った。
「麻宮君はやっぱり優しいね」
『…はぁ?』
「ありがとう!私は元気だよ!……私は強いから、大丈夫だから」
『森下?』
森下はそれだけ言うと「なんでもないよ!」と笑った。
なんなんだ、この小さな違和感。
顔は見えないけどどこか元気がない感じが声で分かった。
「急に電話してごめんね?…じゃあ、また学校で!」
『…おぉ』
そんな違和感を感じながらケータイを閉じた。