月は太陽に恋をした
雨は嫌いだ。
濡れるし、空の色が澱んでしまうから。
ただ、雨の音は好きだ。
なんとなく独りじゃないと感じられるから。
傘にぶつかる雨音を感じつつも、いつもと同じような足どりで家へと向かった。
途中でさっき寝転んでいた河原を通る。
そこを抜けるとすぐそこがマンションだ。
いつもなら真っすぐに帰る、
でもなんとなく今日は河原にかかる橋を渡って、少しだけ遠回りして帰る事にした。
ほんとに、なんとなくな。
橋を渡り始め、足元を見ていたが人の気配を感じて顔を上げた。
『…っ』
橋の中腹にはまだ、
森下が立っていた。
傘もささずに
10分ほど前のようにまだずっと川を眺めていた。