立花香織の秘密

「陸斗(りくと)?」

私は懐かし声を聞いて、振り返りながらきいてみた。
すると、笑顔で
「そうですよ!」
と、答えてくれた。
私は嬉しくてたまらなかった。
久しぶりに会えたことと、憶えてくれていたことが。
そんな事を考えていると、心の中にまたイラだちが広がってくる。
「どうかなさいました?」
陸斗が心配そうな顔で聞いてきた。
私は言おうか言わないとこうか迷った末、言うことにした。
「実は華鈴と喧嘩しちゃったの……それで……」
「そうなんですか。どうして喧嘩なされたのですか?」
「……あのね、今日は本当は、友達と遊ぶ約束をしてたの……。
でもね、華鈴に呼ばれたから、来たの……。
なのに、華鈴ってば、来て早々に私の血を吸って満足してるのよ。
私だって飢えてるのに……」
私は途中から泣いてしまっていた。
話していると、何だか悲しくなって、泣いてしまった。
私はそんな自分をかっこわるいなぁ、と思いながら陸斗の返事をまっっていた。
すると、陸斗がゆっくり口を開く。
「それは華鈴様が悪いですね。謝ってもらいに行きましょう。
ついて行ってあげますから」
笑いながら私にそう言うと、私の手を持って歩きだた。
「イヤだ! 放して!」
私がそう叫んだのに止まってくれなかった。
だから、仕方なくついて行くことにした。



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