はないちもんめ

早紀のお父さんは
大工をやっていた。
今は歳のせいもあり
引退している。
今から行く家も
早紀のお父さんが
お父さんの弟子と共に
建てたものだ。

早紀の実家に到着する。車のエンジン音に
気付いたのか
家の中から
何かやっていたのか
エプロンで
手を拭きながら
早紀のお母さんが
出てくる。

「早かったわね。恵、大きくなったわね」

早紀のお母さんは
真っ先に恵に
嬉しそうに話しかける。
恵も早紀のお母さんの
笑顔に答える様に
笑顔で返す。

「運転、お疲れ様」

最後に私に
優しく言葉をかける。

早紀のお母さんは
穏やかだが
芯の通った
古風な女性だ。

早紀のお父さんにも
頭はあがらないが
お母さんには
絶対に頭など
あがらなかった。

「暑かったでしょ。さあ、家に入って」

私達は
早紀のお母さんに
進められるが
ままに
家の敷居を跨いだ。

家の中は
今時
珍しく
玄関土間があり
縁の下がある家だ。

何よりも凄いのは
大黒柱があるって事だ。
家の旦那を
一家の大黒柱と言うが
家の大黒柱を
一本
壊すと家の全てが
壊れてしまう。

そこから
旦那を一家の大黒柱と
言う様になったらしい。