はないちもんめ
「お父さん、こんにちは」

私は
早紀のお父さんに
挨拶をするが
返事は返って来ない。
私だけに挨拶を
しないわけではなく
無口なだけだ。
必要最小限の
言葉しか言った所以外
見た事がない。
「お茶」「飯」「風呂」「寝る」
そのぐらいだろうか。

しかし
いつも仏頂面の
早紀のお父さんだが
唯一
恵にだけは
笑顔を見せる。

早紀のお母さん曰わく
昔は気が
短かかったらしい。
まだ入って間もない
自分の弟子が
お父さんのノコギリを
触ろうとしてしまったらカンナを投げたらしい。
「麦茶を出してくるから待っててね。お父さんはどうする?」

「・・・・」

汗をかく私達に
お母さんは
気を使い冷蔵庫に
向かう。

「そんな気を使わないで下さい。私が入れますよ」

私が
早紀のお母さんに
伝える。

「普段、仕事で疲れているのだから、休んでて」
私に伝え
冷蔵庫に麦茶を
取りに行く。

氷の入った
コップを5つ持って
冷たく冷えた
麦茶をコップに
注ぐと
カランカランと
コップの中で
氷が涼しげな音を
奏でる。

早紀のお母さんは
お父さんの所にも
お茶を出す。
出されたお茶を
黙って飲む
お父さん。
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