たべちゃいたいほど、恋してる。
「あぅ…ご、ごめんなさい…」
『……30分で迎えに行くから準備して待ってなさい』
夏希の溜息に肩を落とす優衣に夏希はもう一度こっそりと溜息を吐くと、きっちり30分だからねと念を押すよう優衣に告げる。
優衣の家の前まで夏希が迎えに来る光景は、優衣が高校に入学してから近所では当たり前に見られるものだ。
その始まりは入学式当日に学校まで辿り着けず泣きながら迷っていた優衣を夏希が見つけたというもの。
それが2年に上がった今も変わらず続いている。
「え!?いいの?いつもより1時間も早いよ?」
『…1時間も早く起こしたのは誰よ』
他でもなくあんたでしょ、という夏希に優衣は返す言葉もない。
(うぅ…そうだよね。いくら興奮してたからって、なっちゃん起こしちゃダメだったよね…)