たべちゃいたいほど、恋してる。
《そんな噂は知りません》
授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響く。
あのあと、奇跡的にこっそりと音楽室に入ることに成功した優衣は、教室に戻った後の授業も無事に受けることが出来た。
結局全ての授業が終わっても、龍之介を見かけることはなかったが。
「ちょっと、うーちゃん!」
よかった、と一人安心していた優衣のもとに終礼と同時に駆け込んできたのは入学以来の友人・高野夏希(タカノ ナツキ)。
「なっちゃん?どうしたの?」
勢いよく自分の席に飛び付いてきた夏希に驚きつつも首を傾げる優衣。
普段冷静な彼女にしては珍しいと思ったものの、その迫力に押されて言葉にするには至らなかった。
「…あんた、いつから大上と知り合いなの?」
眉を寄せ必死の表情をする夏希に優衣は再び首を捻る。
(何故そんなことを…?)
「……さっき、音楽室まで大上と来てたでしょ」
たまたま私の席から見えてたのよ、という夏希に優衣はハッと顔を強ばらせた。