たべちゃいたいほど、恋してる。
眠りの境界に片足を突っ込んでいた優衣は、教師の口から紡がれた名前に勢い良く顔を上げた。
(大上…龍くん!)
「…すんません」
聞こえてきた機嫌の悪そうな声に慌てて後ろを振り向けば、視界に入ったのは自分の席に座ろうとしている龍之介の姿(実は龍之介の席は優衣の右斜め後ろ)。
不機嫌オーラ垂れ流しの龍之介に声をかける強者生徒などいるはずもない。
そんな龍之介の顔には昨日まで無かったはずの真新しい傷がいくつもついていて。
優衣は思わず顔を顰める。
(な、何で!?昨日は何にもなかったよね…?)
右眉の上には切り傷があるのかガーゼが貼られ、唇の右端には絆創膏が一つ。
他にも手当てこそしていないが小さな傷がいくつもあった。