たべちゃいたいほど、恋してる。
そう思うものの、優衣はコートの中の龍之介から目を離すことが出来ない。
真剣な眼差しが。
揺れる髪が、流れる汗が。
その全てが優衣を魅了する。
夢中にさせる。
だから気付かなかったのだ。
「うー!危ない!!」
響いたのは健の声で。
焦ったようなその声にはっとした優衣が慌てて顔を上げれば、見えたのは自分に向かって真っすぐに飛んでくるバスケットボール。
理解しきれない状況に、優衣は足が竦んで動けない。
(え、や…ぶつかるっ!?)
くるであろう衝撃に備えギュッと目を瞑り体を小さくする優衣。
しかし
(……あれ?…痛く、ない…?)
予想していた衝撃は訪れず、かわりにどこか安心する香りが優衣の体を包んだ。