たべちゃいたいほど、恋してる。




「優衣、知らなかったのか?」




首を傾げて問い掛けながら、龍之介は自分の弁当箱に入っていた玉子焼きを箸で摘み優衣の口へと運んでいく。


それを素直に受け取った優衣は数回コクコクと首を縦に振った。


そして"おいひぃ"と嬉しそうに両手で頬を押さえている。

ふわふわと、溶けてしまいそうな笑み。

そんな優衣の笑みにトクンと龍之介の体の奥の奥が音を奏でた。




(そういや入学式ん時、揉めたっけな…)




それは初日から絡まれたうえに謹慎までくらったというあまり思い出したくない苦い思い出。

もしあの日に戻れるなら、龍之介は間違いなく入学式を欠席するだろう。

それほどに、思い返しただけでも嫌な気分になる記憶。




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